支援の現場で気づいた——虐待は「外に向けられた自傷」だということ

はじめに——見えない構造


虐待は「外に向けられた自傷」である——そんな仮説を持って、支援の現場に立つことがあります。
崩れそうな自分を支えるために、誰かを傷つけることで「存在」を確認する。その構造を理解することは、加害を赦すことではなく、連鎖の根っこを見ることです。

支援の仕事をしていると、加害者と呼ばれる人たちと向き合う瞬間があります。世間的には「許せない人」として語られる存在。
でも、その人の言葉に耳を傾けると、底に沈んだものが見えてくることがあります。怒りではなく、恐怖。支配ではなく、消えてしまいそうな自分へのパニック。

 

暴力が「存在の証明」になるとき

 

自傷という行為は、耐えられない内的な緊張を「身体という現実」に逃がす行為だと言われます。痛みによって、今ここに自分がいることを確かめる。感情が言葉にならないとき、皮膚が代わりに語る。

では、その矛先が外に向いたとき、何が起きるのでしょうか。

暴力の瞬間、加害者は強烈に「存在」します。加害者としての自分が、圧倒的なリアリティを持って立ち現れる。それは歪んだ形ではあるけれど、「自分が消えることへの恐怖」を一時的に打ち消す体験になりえます。殴ることで、崩壊を免れる。支配することで、無力感をかき消す。——これが「外に向けられた自傷」という仮説の核心です。

 

連鎖の根っこにあるもの

もちろん、この理解は免責ではありません。子どもが傷つく事実は変わらない。痛みの連鎖は、理由があっても止めなければなりません。ただ、「なぜ止められないのか」を問うとき、この視点は重要な鍵になります。

多くの虐待加害者の来歴を聞くと、彼ら自身が傷つけられてきた過去が浮かび上がります。愛されることと傷つけられることが、同じ文脈の中に存在していた幼少期。感情を言葉にする術を教えてもらえなかった育ち。「つらい」と言ったとき、それを受け取ってもらえた経験の乏しさ。感情を言語化できない人は、身体で表現するしかありません。そしてその表現の形を、最も近くにいる存在——子どもへ向けてしまう。「なんであんなことをしてしまったのか、自分でもわからない」という言葉を、加害者から聞くことがあります。それは言い訳ではなく、多くの場合、本当のことだと思っています。自分の内側で何が起きているかを把握できないまま、衝動が体を動かしてしまう。その瞬間、思考は止まっています。

連鎖を断ち切るために

 

だから支援は、「やめなさい」だけでは届きません。
「あなたの中で何が起きているのか」を一緒に見ていくこと。崩れそうになるとき、暴力以外の方法で自分を支えられるようになること。感情に言葉を与えること。そして、かつて自分が受け取れなかった「受け止められる体験」を、少しずつ積み重ねること。

子どもを守るために、加害者の内面を理解する。それは矛盾しているように聞こえるかもしれません。でも現場では、この両方を同時に持つことが求められます。被害者への眼差しと、加害者の構造への理解。どちらかを手放したとき、支援は半分になります。

虐待は連鎖する、とよく言われます。それは遺伝でも運命でもなく、「痛みの表現の仕方」が受け継がれていくということです。だとすれば、その連鎖を断ち切る場所もまた、人と人の間にあります。

誰かに「それでいい」と言ってもらえた経験が、人を変えます。支援とは、その経験を手渡すことだと、私は思っています。

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