先日、クライアントさんから
「根拠のない恐れ」
があるので、何とかしてくださいと相談されました。
根拠ない・・・・
医療現場で良く使われるものに「認知行動療法」がありますが、
その心理療法は始めに「認知」があって「感情」を作り出すという考え方です。
つまり
根拠のない恐れは ”ない” となります。
多分、「認知行動療法」Onlyのセラピストであれば、クライアントさんの「根拠ない」と表現している部分を無視して、意地でも根拠を探すでしょうね。
かつての私がそうでした。
しかし、どんな場合であっても、クライアントさんの話している内容が全てです。
例え事実と異なっているとしても、カウンセリング中だけは、クライアントさんの表現が全て正しいのです。
その人の心を扱うのですから、それでよい。
根拠がないというのですから、その言葉をそのまま大事に扱います。
で、実際に私はどんなセラピーを行ったかというと・・・
ただ、その「根拠のない恐れ」を感じてもらうだけです。
多分、何かのトラウマがあって、根拠が隠れているのかもしれないし、本当にないのかもしれない。
そこに眠っているものを「感じる力」を使って引き出していきます。
一人では中々難しいので、そこはセラピストである私が、お手伝いします。
ただただ感じてもらったら・・・
クライアントさんは、
「左脇腹にごちゃ混ぜの感情がある」
ことに気づきました。
それをずーっと、あることをしながら追っかけていったら・・・
クライアントさんの手が自然に、ミカンの皮をむくように動き始めました。
一枚一枚、丁寧に剥がすごとに、思考が剥がれていく。
今度は色々な感情が剥がれていく。
しばらくしたら、クライアントさんが何かぱーっと変わりました。
クライアントさんのイメージの中で突然、水晶のようなものが出てきたそうです。
みたことのない名前もつけられないものです。
そこから、2歳のクライアントさんの記憶が浮かびました。
何かミカンの皮をむくような手の動きを始めながら、楽しそうな表情を浮かべはじめました。
このミカンの皮をむく手の動きは、昔、小さい頃にやっていたな~
そんなことをぽろぽろと話始めてから間もなくして、クライアントさんが
「あー、そうかー」
と確信に満ちた声を上げました。
ただ楽しいから、その動作をやっている。
その楽しい気持ちをカタチにしたくてその動作をやっている。
その『楽しい』を世の中に発するために やっているんだ!
それに気づいたとき、クライアントさんから深い涙が流れました。
「私は、自分のカタチにならない思いを表現したくて、画家になった。
でも、その大事な思いは、中々他人には分ってもらえない。
怖くなって、その大事な思いを、いろんな思考や感情で覆い隠していた。
そしたら、いつの間にか根拠のない恐れだけが鎮座して、絵が描けなくなってしまった。」
「今、
『ただただ、
楽しいという気持ちを表現したい』
この感覚を思い出しました。」
こんな大切な思いを、実際にその場で見ることが出来て私もただ感激しました。
芸術家の方って、本当に命を削って作品を作っています。
そこに表現されるものは、 「存在以前の輝き」 です。
そんな素敵なものをカタチにしている
芸術作品は、魂が震えるほど感動します。
本物の芸術に触れたくなりました。
心を満たすって、こういうことなだなーと、このクライアントさんから学んだできごとでした。
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