ボクがいじめられ続ける理由

ある相談者さん(男性30代)と話していて、

「実は・・いじめられっ子を手放すのが怖いんだ」
と告白されました。

小学生の頃からずっといじめられっ子で、
人への不信感ばかりが膨らんでいる人です。

友達だと思っている人に、
馬鹿にされたり利用されたり、
裏切られたりしているのに
嫌なことを嫌だと言えない。

なぜ言えないのか・・

その原因は、彼の生い立ちにありました。

特に母親から「自分を出すなと」言われて育ったので、
自己主張することに罪悪感があったんです。

自分を出すと、人は離れていくと思い込んでいました。

幼稚な男性社会では、
「何も言わない=何をやってもいい存在」だ
と思われがちです。

彼の反応を楽しむように、
周囲の人たちはあらゆる手段で虐めてくるのですが、
彼は一向に反応しません。できないのです。

普通だったら我慢の限界というものがあって、
反撃してもよさそうなものですが、
彼は無表情にそれを許し続けます。

自分からNOを突きつけて、
相手を遠ざけたたら 自分は一人になってしまう。

その勇気がなかったのです。

そんな彼が自分を守るために取る手段は 心の中で 
”他人を軽んじる” こと。

心の中で他人や世の中を見下して
心のバランスを取っていました。

でも本当は寂しいし、みんなと繋がりたい。

だから、嫌だと言い切れず、
虐められても耐えることしかできない。

大人になり就職してからは、
理不尽に押し付けられる仕事をがんばってやりました。

思い返してみれば、学生時代も社会人なった今も 上司、同僚、友人や先生までも、
彼をいいように使って、 みんながやりたがらない仕事を押し付けられてきました。

どんなに一生懸命がんばっても
都合よく利用される存在にしかなれなかった。

どこにも救いの場がなく、
心を閉ざすことしかできませんでした。

「人が怖い。社会が怖い。
僕が救われる道はどこにあるのだろう。」

ずっとそればかり考えてきましたが、
一向に答えに辿り着きません。

何年も何年も心を閉ざして、
最低限しか人とか変わらなくて済む仕事を選んできました。

新聞配達
工場の作業員
ドライバー
など・・

でも本当はずっと人を求めていたんです。

「誰か僕を助けて」と心の中で叫んで、
いつか誰かが自分のことを
わかってくれるかもしれないと
期待し続けていました。

虐められ続けていると、
この期待を手放さなくても済むのです。

他人と境界線を引いて、
もう入ってくるなと追い払うと、
永遠に一人になってしまう。

そんな気がして、
強く言い返すことができなかった。

どうしても、
一人になる恐怖に勝てない。

「僕は一人になるのが怖いんだ。
だから、僕は虐められ続ける方を選んでいる。」

「実は・・いじめられっ子を手放すのが怖いんだ。」

数回目のカウンセリングで、
彼はようやく自分からこの言葉を言うことができました。

彼は、一人になる恐怖を直視し、言葉にすることで、
いかに矛盾した期待を持ち続けていたのか
ということに気づき、そして手放せました。

カウンセリングが大きく方向転換する瞬間です。

この時に心と体で起こっている反応を丁寧にひろって着地した後、
カウンセリングは次に向かいます。

何かというと、彼を安全に受け入れてくれる場所探しです。
それは過去にあるかもしれませんし、これから作るのかもしれません。

こんなとき多くの人は、
「一人でいられる強い心はどうやってつくるのですか?」と
質問するのですが、
その発想は解決と逆の方向ですとお伝えします。

安心して一人でいられる人は、他人とも自由に繋がれます。
過去に誰かに受け入れられた、人との間に安全な関係があった人です。

一人でいられる人は、一人でいられる心を持とうとしません。

彼に安全に受け入れてくれる場所を探しましょうと提案すると、
そんな場所は過去にも未来にも、どこにもありません、といいます。

ですが、本当でしょうか? なぜ、一人になるのが怖いと思うのか・・

それは、誰かと繋がって安心していた過去があるからです。

誰かと繋がっていた安心感を知っているから、一人が怖いとわかるのです。

よくよく探してみれば彼には、
近くのお年寄りに受け入れられた素晴らしい体験がありました。

なのに、年寄りと仲良いなんてかっこ悪いと、
恥ずかしい体験に認定されていました。

彼は、自分を好きになってくれる人、
自分を受け入れてくれる人を
馬鹿にし蔑んでいたから、
気づけなかっただけでした。

人を信じられないという思考が、
その存在をずっと隠してきました。

ずっとずっとあったのに、気づかなかった。

気づいて受け入れた時、彼の世界は一変しました。

視点を変えるだけで、180度違う世界が広がる。

「人ってこんな些細なことで幸せな気持ちになれるんですね。」

最後のカウンセリングでこう言ってくださった彼は、
別人のように軽やかでした。

一見複雑そうに見える問題であっても、
自分の中の盲点を見つけ直視すると、
驚くほどスッキリすることが多々あります。

実は、複雑にしていたのは、
自分だったということはとても多いです。

もし今出口のない問題に悩んでいるとしたら、
盲点を探してみるといいかもしれません。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

セラピー前にお読みください

  1. 「しなやかな心」をつくるために知っておきたい”5つの鉄則”

  2. 心のバランスの整えるって、つまりコレを整えることなんです。

  3. トラウマとは○○の失敗なんですっ!!(その1)

  4. トラウマは生理現象!?(その2) ◆◆闘争逃走反応◆◆

  5. トラウマは生理現象!?(その3) ◆◆多重迷走神経理論って何?◆◆

  6. トラウマは生理現象!?(その4)◆◆トラウマ症状のメカニズム◆◆

  7. トラウマは生理現象!?(その5) ◆◆トラウマを解放するには・・・◆◆

  8. 回復の過程 ◆◆ペンデュレーション(振り子)◆◆

  9. 身体のサイン、見逃さないで! その反応には意味があります。

最近の記事

  1. 「今、ここ」ってどこよ?

  2. 昔の自分を肯定できない人にこそ言いたい・・「大人のあなたを支えてくれるのは、子どもの時のあなた」

  3. 毒母の看取り、A子さんの場合

  4. カウンセリングにも好転反応がある!?

  5. ボクがいじめられ続ける理由

  6. 不安の処方箋

PAGE TOP